誰も言わないオンライン会計ソフトの闇
法人の会計を行うにあたっていろいろ調べているのだが、実際に使っていれば疑問に思うはずなのに、これらのソフトを紹介しているYoutuberやウェブサイトのほとんど誰も言わないオンライン会計ソフトの闇に気がついたので、今後こういったソフトを選択する人のためにメモしておこうと思う。
結論から:オンライン会計ソフトから逃げ出すのは至難の技なので可能であれば使わない方がいい
単純に言えば、法人会計の法定保存期間は7〜10年間なので、下手すると、その会計ソフトが嫌になっても基本的には変更ができず、法人のある限り未来永劫使い続けなければいけないということだ。
つまり、データを人質にされてしまうので、抜け出せない。オンライン会計ソフトの選択とその運用で、まず最初に考えねばならない点がこれなのだが、この点に言及している人を見たことがない。わずかに一点見つけたのが以下の動画だ。17:23からの部分。
この問題は電子帳簿保存法によって強化された
電子帳簿保存法については別途調べて欲しいのだが、要するに「あらゆるものを電子的に保存して簡単に検索できるようにしろ、国税が調査する時のために!」という要求で、これが2024/1から強制されることになっていた。しかし、「日本全国そんなことするのむりー」ということで、緩和され、ほとんど今まで通りの運用でもとりあえずは構わないことになったようだ(ここ不正確かもしれないので、各自調査のこと)。
ともあれ、仮にこの法律に則った場合の厳格な運用というのは以下になる。
- 何らかの書類(請求書でも領収書でも)をデジタル化する。レシートの場合はレシート画像。ほとんどの場合、紙の方は捨てちゃっていい(一部例外あり)
- この書類にタイムスタンプを押してもらう。これは政府認定のタイムスタンプ業者がおり、「この書類がたしかにこの日時に発生しましたよ」という証明書を発行してもらう。
- しかし、必ずしもタイムスタンプ業者に頼む必要はなく、有名どころのオンライン会計ソフトにアップロードすれば、勝手にタイムスタンプを押してくれる。
ということだ。当然のことながら、会計書類を電子化するには、オンライン会計ソフトにアップロードするのがてっとり早い。
しかしだ。このソフト会社との契約を解除すれば、何も見れなくなってしまう。保存期間は7〜10年間なのに。
そういうこと。会計ソフト会社は、電子帳簿保存法を自社囲い込みのさらなるチャンスとして利用しているのである。
実際に、タイムスタンプはおいといても、いったんアップロードしたPDFなり画像なりをダウンロードしようとすると、一つずつしかダウンロードできないようになっている。これは面倒すぎて誰もやらないだろう。もちろん、タイムスタンプ付きでダウンロードする機能もついていないようだ(間違いなら教えてください)。
つまり、いったんアップロードしたが最後、未来永劫使い続けるのだ。あるいは、少なくともソフトを乗り換えた以後も、7〜10年間は払い続ける必要がある。
やよい会計オンラインは二年間無料!でも逃げ出すには?
で、現在実際に使ってみているのは、やよい会計オンラインなのだが、これは新規設立法人であれば二年間、それ以外でも一年間無料なのである。何と太っ腹な、それだけ自信があるのだろうと思っていたのだが、実はこういう裏があったのだ。何も考えずにこのソフトの機能をフル活用した場合、逃げ出せないようになっているのである。
この事実はガイドのどこにを探しても語られていない
もちろん、YouTuberも言わないし、その他の第三者さえ誰も言わない。特に税務関係の人気YouTuberなど、こういった企業にお世話になっているだろうから、余計にこういった闇は言わないことだろう。
freee会計にもマネーフォワードにも登録して触ってみたが、おそらく同じようなものかと思う。
YouTuber、紹介ウェブサイトは、まず「嫌になったら逃げ出す方法と準備」を語れ!
上にあげた御三家を紹介する動画や記事は多々あれど、この闇について語っているところは見たことがない。あれやこれや「使いやすい」「使いにくい」とは言うのだが、当然だが、フリーソフトではなく、多額をかけて開発しているプロプライエタリソフトだからたいていの要求にはどれも応えられるだろう。
まず語るべきところは、「乗り換えに支障はないのか?」という点であるべきだ。この意味でほとんどのYouTuber、紹介ウェブサイトは失格である。
オンライン証憑登録
ところで、オンライン型ではないパソコンインストール型のデスクトップ弥生を使っている人とか、まだ手作業で会計やってる人のためだろうか、これらの会社では、証憑のみを登録する目的の、いわばタイムスタンプ付きのオンラインストレージも提供している。ここにPDFとか画像とか放り込めば簡単に検索でき、いつでも閲覧できるという仕組みだ。
- マネーフォワードのクラウドBOX(いくらでもずっと無料だというがほんとか?裏がありそうだ)
- freee会計のファイルボックス(月100枚まで無料、それ以上はfreee本体契約が必要)
- 弥生会計のスマート証憑管理(これは弥生会計オンラインに付随して現在使用できるが、弥生会計オンラインとの連携方法が良くわからない)
もちろん、これらも同じで使ってはならない。この連中の目論見としては、請求書やレシート等の電子的証憑を自社にアップロードさせ、タイムスタンプをつけて国税の要件を満たすよう保証する一方で、自社製品に囲い込むのを目的としている。
強調したいのだが、この点は間違い無いところである。ユーザを「便利ですよ」と誘導して、自社ソフトに意図的に囲いこんでいるのである。
もし「そうではない」と反論するのであれば、「タイムスタンプ付きですべてを一度にダウンロードする機能」が存在しなければならないが、そんなものはつけてはいないだろう(間違いなら教えてください)。
こういった細かな点から、この業界の暗黙の了解で誰も言わない「この機を利用して客を囲い込もう」という目論見が透けて見えて来る。
タイムスタンプ業者の利用
上にあげたオンライン会計ソフトの付帯機能や、独立したオンライン証憑登録機能を使わずとも、自分のパソコンにレシート画像などをおいておけば良いのだが、その場合にはタイムスタンプを押す必要がある。
例えば、「このレシート画像がたしかにこの日時に発生しましたよ」という証明書をどこからかもらうわけだ。しかしこれも、結構金がかかるようだし、面倒なのでやりたくない。しかも、ひどいことに、この証明書の形式はまちまちで、業者Aと業者Bの証明書を一律に検証する方法は無いらしい。標準が無いようなのである。いつもどおりのずさんなお役所仕事というわけだ。
※技術的な観点から見た場合だが、この仕組みは本当に単純で、なぜ政府認定業者のみにしか認められていないのかが不思議な位である。本当に、少々知識があれば、簡単に誰でもできる。単にレシート画像のハッシュ値を業者に送って、その日時とハッシュ値が真正であるとの証明書を発行するだけなのだから。
ではどうすれば良いのか?
こういったオンライン会計ソフトは非常に便利なものだし、もちろん使って良いのだが、「いつでも逃げ出せること」を前提にして運用しなければならない。これが鉄則のはずだ。まともな考え方をお持ちの方であれば、この意見には賛成するはずである。
また、そもそもの2024/1スタートの電子帳簿保存法の要件はかなり緩和されたらしく、これまで通り、紙は紙のまま、電子的なものは電子的のまま(Amazonの領収書など)で良いようだ。このあたりについて下手なことは言えないので各自調べて欲しい。
ただ、すべてが電子化されていてスグに検索できるというのは、国税の立場からだけではなく、経営者の立場でも便利なものだろう。紙は残しておくにしても、写真やスキャンで電子化して検索可能にしておくのは良いことだ。
その際に、改ざんなどできないようにするにはどうすべきか。一つの案としては、自社のメールシステムではなく、フリーメール等の第三者のメールシステムに送りこんでしまうことだろう(利用は自己責任で)。こうすれば、削除はできてしまうものの、残っているメールの内容の改ざんは絶対に不可能だし、日付の変更も不可能である。もちろんこれと共に、事務手続き運用規程を作成して、それを守ることが必要になる。これは、国税から「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類(概要)」というサンプル文書が出ている。
あるYouTube動画を見ていたら、「Google Driveなどのオンラインストレージに放り込めば良い。削除の記録が残るし」と言っていたのだが、これは全然だめ。完全削除できるし、日付の改ざんも可能と思われる。
ということで、現在思いついたのは、第三者のフリーメールを利用するということ。他に良い案があれば教えてください。
ディスカッション
コメント一覧
興味深く読ませていただきました。クラウドサービスは後先考えずに手を出すのは怖いですね。
私の会社は弥生の「あんしん保守サポート」に加入しているので弥生のスマート証憑管理が無料で使える状態です。
ですが、将来的にずっと弥生を使い続けるかは定かではないのでサポートに聞いてみました。
結論:一括ダウンロードはできない。但し「あんしん保守サポート」を解約しても、証憑の検索・ダウンロードのみ利用できる
参照モードが7年間利用可能、とのことでした。参照ができれば、一括ダウンロードはなくても良いかなと自分は思いました。
因みに、INVOXの電子帳簿保存は解約と同時に証憑が参照できなくなるそうです。